私は塾や予備校で数学を教える際、最初の授業で必ず一冊参考書を買うように言います。これは受験学年でなくても、高校1年生に対しても言います。
しかし、単に参考書と言っても、難易度や詳しさなどが異なるのはもちろんですが、大きくタイプも分かれます。今回の記事では難易度ではなく、数学の参考書のタイプやその効果的な使い方について説明していきます。
①演習書タイプ
章ごとの重要な典型問題や標準問題を、例題で詳しく解説し、その類題も用意されているタイプの参考書です。有名なものでは、基本問題精講(旺文社)や、大学への数学の1対1対応の演習シリーズ(東京書籍)のようなタイプです。
問題集との違いは、量をこなすことよりも、タイプやテーマを絞って解法とともに頭に叩き込んだ方が良い問題をじっくりとこなしていくことを目的としているところで、大抵1ページまたは2ページに渡って例題とその要点や解説がされ、その後に類題が用意されています。このタイプの参考書はまず、しっかりと例題の要点や模範解答を読むことが重要になります。そして、例題を通して著者が利用者に身に着けて欲しい知識や解法を、類題で実践演習をしていくというのが一般的な使い方です。
演習書なので、定義や公式の証明などにはあまり紙面が割かれていないものが多いので、教科書に書かれている定義や定理、公式は頭に入っているか他で補えるようにしていることが前提のタイプの参考書となります。
②読み物タイプ
各単元の定義の説明や、そこから公式や定理が導かれるまでの経緯なども詳しく書いた、教科書タイプの参考書で、教科書よりも内容を分かりやすく砕いたものや、より深い内容に触れるものなどレベルは様々です。有名なものでは、Σベストこれでわかるシリーズ(文栄堂)や、総合的研究(旺文社)のようなタイプです。
教科書のように読み進めていくタイプなので、途中で例題などはあっても、類題は省かれていたりすることも多く、演習量は少な目なものが多いです。
その代わりに章末問題のような、章や単元の終わりにまとまった問題が用意されていることもあります。
このタイプの参考書はそれ単体では演習量が不足しがちなので、問題演習は別の問題集や参考書で補う必要があります。その場合は、同じ会社のものだと章立ても似ていたりして使いやすいことが多いです。
著者がどのレベルを想定しているかで、詳しく説明する部分や取り上げる内容が大きく変わるため、他のタイプの参考書以上に、自分の実力や目的に合っているかを見極めて買わないといけません。
③マルチタイプ、辞書タイプ
教科書レベルの基本的な問題から入試レベルの問題まで、演習書タイプよりも幅広く問題を収録し、章の最初に定義や公式、定理もまとめられていて、必要に応じて公式の証明や考察なども書かれている、ようはだいたいのことがすべて書かれているタイプの参考書です。有名なものでは、チャート式(数研出版)、Σベスト理解しやすいシリーズ(文栄堂)のようなタイプです。一般に参考書といわれるとこのタイプを思い浮かべる人が多いと思います。
赤チャート(数研出版)のような一部の例外は除きますが、ほとんどは教科書レベルの日常学習から、大学入試レベルの入試勉強まで対応していて、そのためページ数が膨大で、かなり厚い参考書であるものがほとんどです。
そのため、日常学習で使うのか、受験勉強で使うのかでもその扱いが異なり、その使い方を間違えると非常に効率が悪くなることも多く、私の経験上このタイプの参考書が最も多く買われている割に、使い方を間違えている高校生や受験生が多いように思います。
まず、高校1,2年生のような現在進行形で学校で数学の授業が進んでいる人は、授業で習った内容の復習や、分からなかったところを、習うたびに取り組んでいくのが良いでしょう。
対して、高3生や高卒の受験生は、問題集や予備校のテキスト、過去問などで勉強をしていて詰まったり、分からなくなった部分の類題を探し、その知識の補強に使うのが良いです。
ほとんどのことが書いてあるというのは便利だと言える反面、全部を吸収するには情報量もそれにかかる時間も膨大になります。例題と類題のセットというレイアウトは似ていますが、一通り順番にこなしていくことで実力がつくようテーマと問題数を絞った演習書とはここが決定的に違います。
より細かく分けると、この各タイプのなかでも別れたり、どれにも分類されない特殊なものもありますが、それはキリがなくなるので割愛しますが、大きく分けたとき上記の3タイプに分類できると思います。
どのタイプの参考書にも長所と短所があり、レベルや必要、時間の余裕に応じて有効な使い方が変わります。
よく受験生から参考書の選び方を聞かれるのですが、参考書は何を選ぶか以上に、正しく使えるかのほうが大事です。